2017年 05月 05日
5月3日(水)、晴れ。 上野国史跡めぐり、第6弾。 塚廻り古墳群/第4号墳。 前話、<中の巻>では、説明板そのほかにて、塚廻り古墳群と第4号墳について、ベンキョーした。 <下の巻>では、埴輪について、見ていくこととしたい。 第4号墳の西側に立つ。 説明書きに目を通す。 前方部(作り出し部)の埴輪群を眺める。 墳丘部の埴輪群を眺める。 説明書き。 ---------------------------------------- 国指定重要文化財「上野塚廻り古墳群出土埴輪」(模造) この塚廻り古墳群第4号古墳に並べられている模造埴輪類は、発掘調査によって明らかにされた埴輪類を忠実に復元製作し、出土状態からその配置を復元したものである。 墳丘部には、円筒埴輪、盾形埴輪、家形埴輪、大刀などが配置されていた。 造り出し部には、円筒埴輪のほか、人物埴輪や馬形埴輪が設置されていた。 西端には4体の女子像が配置され、その東部には椅子に座った男子、跪く男子などの7体の男子像が配置され、その北部には飾り馬と馬子が配置されていた。 このような埴輪の配列から、椅子に座った男子を中心人物として、首長権が継承される儀式を再現したのではないかと推察できる。 各々の埴輪のつくりは表現も豊かで、造形的にも非常に優れており、この4号古墳出土の埴輪類を含め、「上野塚廻り古墳群出土埴輪 一括」として、昭和60年6月に国の重要文化財に指定された。 現在、埴輪の現物は群馬県立歴史博物館に保管されている。 平成27年3月25日 太田市教育委員会 ---------------------------------------- 「上野塚廻り古墳群」と頭に「上野」が付されているのは、大阪府堺市に所在する大仙陵古墳(仁徳天皇陵)の陪塚とされる国指定史跡「塚廻古墳(円墳)」と区別するためと思われる。 上野塚廻り古墳群は群馬県指定史跡であるが、出土埴輪は国指定重要文化財なのである。 「埴輪の現物は群馬県立歴史博物館に保管されている」とある。 この地を訪ねる切っ掛けとなったのは、先月24日、群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館で、塚廻り古墳群第1号墳出土の人物埴輪「盾を持つ人」を見たことからであったが、それとは別に、塚廻り古墳群からの出土品の多くは群馬県立歴史博物館に保管されているということなのであろう。 いずれ、群馬県立歴史博物館も訪ねてみたい。 埴輪の配列は「首長権が継承される儀式を再現したのではないかと」とある。 保渡田古墳群(高崎市)の八幡塚古墳でも埴輪群を見たが、塚廻り古墳群第4号墳の埴輪群の配列とは異なった配列であった。 埴輪の配列ひとつをとってみても、学ぶことは多い。 八幡塚古墳の埴輪群の配列を頭の中で思い起こしながら、塚廻り古墳群第4号墳の埴輪群の配列を眺めるのであった。 塚廻り古墳群第4号墳の埴輪配列図。 墳丘部の埴輪配列をアップで。 造り出し部の埴輪配列をアップで。 埴輪配列図と復元配置を見比べてみる。 南西側から眺めてみる。 塚廻り古墳群第4号墳の埴輪群に関する説明書きは、上述の通り、簡単なものであったので、群馬県埋蔵文化財調査事業団のHP記載の解説を紐解いてみた。 ----------------------------------------- 塚廻り古墳群塚廻り古墳群の埴輪は、埴輪の解説書や、全国各地の「埴輪展」で必ずといっていいほど見かけます。 これらは、国重要文化財にも指定されています。 「器をかかげる女子」や「イスにこしかける男子」「かざり馬をひく男子」など、さまざまな人々の埴輪があります。 ひとつひとつの埴輪の美しさもみごとですが、全体ではどんなことをあらわしているのでしょうか。 小さな古墳のまつりごとのようすを今に伝える重要な古墳といえます。 ------------------------------------------- ここがポイント 塚廻り古墳群は、龍舞町がのる台地東方に広がる低地帯中の低台地に形づくられています。 1977年の県教委の調査では、洪水に埋もれた7基以上の古墳群だということがわかっています。 特に3基(1・3・4号墳)は良好な状況で確認されました。 いずれも、墳丘長25m内外の小さな帆立貝式の古墳です。 主体部には竪穴式で箱式石棺が用いられていたと考えられます。 6世紀前半の小古墳の埴輪祭祀のようすを考える好資料です。 ------------------------------------------- もっと知りたい 塚廻り4号墳の埴輪群像からは、特に多くのことがわかってきています。 4号墳では円筒埴輪253、朝顔形円筒埴輪16、家形埴輪1、器財埴輪8、人物埴輪15、動物埴輪2の、総計304本の埴輪が出土しました。 形象埴輪はすぐれたつくりで、それぞれ建てならべられたようすを確かめることができました。 前方部に建てられた円筒埴輪列の区画中にある埴輪は、三つの場面が表現されているという考え方があります。 それは; (1)「祭りを仕切る巫女(みこ)と宴席を盛り上げる女子たち」 (2)「誄(しのびごと)を奏上しながら、ひざまづく男子とその後ろにひかえる男子たちによる祭式の中核の表現」 (3)「2体の馬と2体の男子からみられる、馬飼いという職業集団」 の三場面です。 これまで、同じ時期の群馬町(現・高崎市)保渡田八幡塚古墳(墳丘長96m)のような大型の前方後円墳の埴輪群像については知られていました。 しかし、墳丘長が四分の一ほどの小さな帆立貝式の古墳にも、規模こそちがえ、同じような埴輪群像が建てならべられたことがわかったことの意義は大きいでしょう。 ------------------------------------------ 前方部(造り出し部)の埴輪群。 配列の全体をいろんな角度から眺めてみる。 先ず、正面(西)から。 前列/左から、女子、女子、巫女、腰に大刀を持つ女子。 これが上述の説明にあった「祭りを仕切る巫女と宴席を盛り上げる女子たち」である。 女子が腰に大刀を持っているというのはちょっと不思議ではあるが、髪形からして、そして、胸のふたつのポッチからして、これは女子と見て間違いない。 中列/左から、帽子をかぶった椅子に座る男子、帽子をかぶっていない椅子に座る男子、ひざまづく男子。 後列/左から、両手を口の前に置く男子、筒状のものを肩に捧げ持つ男子。 これが上述の説明にあった「誄(しのびごと)を奏上しながら、ひざまづく男子とその後ろにひかえる男子たちによる祭式の中核の表現」である。 帽子をかぶった椅子に座る男子と帽子をかぶっていない椅子に座る男子については触られていないが、これら二人の男子を保渡田古墳群八幡塚古墳の埴輪群配列に照らし合わせてみると、椅子に座る男子(中心人物)の隣りにいる椅子に座る男子に似ているように思える。 最後列/前、馬飼いと馬、後ろ、馬飼いと馬。 これが上述の説明にあった「2体の馬と2体の男子からみられる、馬飼いという職業集団」である。 少し、斜めから眺めてみる。 右斜めから眺めてみる。 後ろから眺めてみる。 前列/左の、女子2体。 前列/右の、巫女、腰に大刀を持つ女子。 中列/左から、帽子をかぶった椅子に座る男子、帽子をかぶっていない椅子に座る男子、ひざまづく男子。 後列/左から、両手を口の前に置く男子、筒状のものを肩に捧げ持つ男子。 帽子をかぶっていない椅子に座る男子、ひざまづく男子。 前列の腰に大刀を持つ女子、中列の帽子をかぶっていない椅子に座る男子とひざまづく男子。 前列の腰に大刀を持つ女子。 先にも述べたように、女子が腰に大刀を持っているというのはちょっと不思議ではあるが、髪形からして、そして、胸のふたつのポッチからして、これは女子と見て間違いない。 ひざまづく男子。 2体の馬と2体の男子。 馬飼の職業集団。 馬飾り(前列)。 馬飾り(後列)。 次は、墳丘部の埴輪を眺める。 周囲にびっちりと配置された円筒埴輪。 大型の盾形埴輪3基。 大型の大刀6基(配列図では5基)。 大型の家形埴輪1基。 円筒埴輪(3段突帯)。 突帯(とったい)とは、埴輪に巻かれ、貼り付けられている粘土。 別名タガ。 突帯は、いろんな埴輪に見られる。 単位は「条」とのことであるから、「3段突帯」ではなく、「3条突帯」が正しいのでは? 朝顔形埴輪。 盾と家形埴輪。 大刀。 以上が、塚廻り古墳群第4号古墳の様子である。 ここで、保渡田古墳群八幡塚古墳の埴輪群と、群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館で展示されていた塚廻り古墳群第1号墳出土の埴輪「盾を持つ人」を<参考資料>として掲載しておこう。 <参考資料/その1> 保渡田古墳群 八幡塚古墳の埴輪群(高崎市)/2016年11月26日 各埴輪に1から54のナンバリングと名称が付記されている。 <参考資料/その2> 塚廻り古墳群 第1号墳出土の人物埴輪「盾持ち人」/群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館、2017年4月24日 前回、保渡田古墳群八幡塚古墳の埴輪群を見ていたので、今回の塚廻り古墳第4号墳の埴輪群がよりよく理解できた。 前回、群馬県埋蔵文化財調査センター発掘情報館で、塚廻り古墳第号墳出土の人物埴輪「盾を持つ人」を見たことから、今回の塚廻り古墳群探訪につながった。 資料館でベンキョーしてから現地へ、現地で見学してから資料館へ、訪ねる順序はいずれでもよく、両方を訪ねることがベスト。 現地だけでもよい。 現場を見ずして資料館だけというのはよろしくない。 というのが、小生の考えである。 塚廻り古墳群をあとにして、次の立ち寄り先へと向かう。 次の立ち寄り先は、ずっと西にある「新田荘歴史資料館(世良田町)」である。 今朝、太田駅に到着したときは朝早かったので、駅前の観光案内所はまだ閉まっていた。 新田荘歴史資料館に古墳関係の展示があるかどうか、観光案内所で確認したかったので、太田駅を目指し、来た道を戻る。 フォト:2017年5月3日 フォト#32、33、34:2016年11月26日(アーカイブより) フォト#35、36:2017年4月24日(アーカイブより) (つづく)
by kazusanokami-2nd
| 2017-05-05 23:37
| 上野国史跡めぐり
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